永源寺拝観のお知らせ
芽吹きのモミジ
永源寺は、今、新緑の季節を迎えています。
秋の、目を奪わんばかりの鮮やかな紅葉とは、また趣きを異にし、
新緑の穏やかな、それでいて多色彩りあふれる風光は、
何か心をうきうきとさせてくれます。
芽吹きの黄緑色のトンネル。
これもわずかな期間のもの。やがて深緑に移り行きます。
赤い色は「出汐(でしお)のモミジ」といい、
新芽が紅葉し、緑に変化します。
、
《實澄忌 (じっちょうき) 》
去る4月16日、實澄忌の法要が行われました。
この法要は、小倉實澄(おぐらさねずみ)公の遺徳に謝すもので、
導師を、本年4月より新管長に就任された、道前慈明(どうまえじみょう)
《室号「槐安窟(かいあんくつ)」》老大師が務められ、
一山の僧と、開基寺のご住職、
全国の實澄公の末裔とが一堂に会し、厳かに営まれました。
小倉實澄は、室町時代後期の武将で、蒲生郡佐久良(日野町)に城を構える領主でした。
京都五山の学僧と親しく交わり、応仁の乱で荒廃した都から、
横川景山(おうせんけいさん)・桃源瑞仙(とうげんずいせん)などの高僧を
永源寺に疎開させ、禅門護持に尽力されました。
文武に優れ、時の永源寺住職に参禅して法名を受けた入道であり、
城下に「仲明寺」を建てて開基となっています。
法号を「仲明寺殿文紀正網大居士」と号します。
永源寺の山奥には、「識蘆の滝(しきろ)」と呼ばれる滝があり、
この近くには、かつて實澄公が建て、学僧たちを住まわせたという
「識蘆庵」の跡が残っています。
※識蘆とは、唐の詩人 蘇東坡の「廬山の偈」に因んだものです。
題西林壁 西林の壁に題す だ 身の 此の山中に在るに縁る
横看成嶺側成峰 横ざまに看れば嶺と成り 側よりは峰となる
遠近高低各不同 遠近 高低 各々 同じからず
不識廬山真面目 廬山 真の面目を 識らざるは
只縁身在此山中 た
(禅的大意:目に見える姿は、時・場所・心によって、様々にうつりかわる。
「この山中」そのまま「真の面目」とは何だろうか)
数百年という時間をつなぐ、建物と子孫、そして法要。
歴史の妙を感じます。
方丈(本堂)と法堂(はっとう)の間にある小さな囲い庭に、「開山お手植え」とも呼ばれている、紅白一対の老梅があります。樹齢は定かでありませんが、幹ぶりを見ても相当な老木です。
梅の間には、俳聖 松尾芭蕉の
「こんにゃくの さしみもすこし 梅の花」
が刻まれた句碑が建てられています。
この句は、芭蕉が亡くなった妹への追慕の思いを込めしたためたもので、永源寺に来て詠んだのではありません。
適々、この句を墨書した軸を所蔵されている方があり、「永源寺=こんにゃくの名所」、「梅の花」になぞらえて、字を石に刻んで寄進をいただいたものだそうです。
二本の樹は、白梅のほうがやや開花が早く、紅白そろっての開花はなかなか珍しいものです。
この時期、永源寺の境内では企業の新入社員研修なども行われています。
挨拶の練習など、静かな山寺に一時元気な声が響き渡ります。
企業経営と禅寺修行、本来目指すものは全く相反していると言えますが、
しかし、どちらも「無心」に、「猛烈・綿密」に
取り組むということにおいて、通じ合うところがあるかもしれません。
風の寒さや、と歌われるとおり、
いくらか春めいてきたとはいえ、まだまだ肌を刺す寒い日も続きます。
しかし、温かい日には汗ばむほどの陽気、まさしく三寒四温、といったところでしょうか。
永源寺の境内では、ようやく梅のつぼみが開き始めました。
天気の良い昼下がり、境内を見ておりますと
「久方の 云々」、などと、紀友則の一句も浮かんでくるこのごろです。
方丈前、鐘楼の袴の黒に白梅が映えます。
法堂前の紅白対の老梅、開花まであと少しです。
楓も芽をつけ始めました。
〈3、4月の行事など〉
3/21 春季彼岸会(午後1時)
4/1 万人講(午前8時、 総供養施食会:午後1時)
4/8 降誕会 (午前10時)
4/16 實澄忌
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